第17章 車輪のある生物
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車輪はでこぼこ道が苦手だけれど…
「なぜ生物には車輪がないのか」
「車輪はでこぼこ道が苦手だから」というのが一般的
でも本当にそうだろうか
車輪はエネルギー効率がよい
ヒトが車輪をよく使うのはエネルギー効率がよいから
車輪の利点を使うために車輪の欠点を修正する
つまり、でこぼこ道を平らにする
車輪はどのくらい地面がデコボコだと進めないのか
車輪が進化しないのはおかしい
車椅子や自動車の場合は段差が車輪の直径の4分の1ぐらいまでならなんとか上ることができるようだ
車輪だけが単独で転がっていく場合なら原理的には車輪の直径の半分なら上ることがkな王
タイヤの直径が70~80センチのジープなどで道のないサバンナや砂漠を走ることは可能だし、火星の探査者もタイヤを使って調査している
たしかに車輪で走れないところも多いだろうが、地球上のあらゆるところで車輪が全く仕えないということはないはずだ
しかも、車輪を複数使えば、半径よりずっと高い段差を上ることだってできる
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さらに言えば、複数の移動手段を進化させた生物はたくさんいる
車輪が仕えないときは別の手段で移動して、車輪は使えるときだけ使う生物が進化したっておかしくない
以上の話をまとめよう
地球上で車輪が使える場所はあまりないけれど、まったくないわけではない
車輪を複数使えば、かなりデコボコでも走れるので、車輪が使える場所は思ったより広いかもしれない
車輪だけでなく肢も同時に進化させれば、もはや何の問題もない
生物の回転構造
回転する構造を持つ生物は、いくつか知られている
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鞭毛をスクリューのように回転させて水中を移動する
鞭毛も体の一部なので、タンパク質が必要
しかし、回転するので血管をつなげるわけにはいかない
鞭毛の中心を通る穴に栄養を入れる
原核生物には核がなく、DNAが細胞質基質の中に直接漂っている
大腸菌などの細菌は原核生物だが、真核生物の中にも回転構造を持つものがいる
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デベスコビナは細長い細胞だが、その先端部分がくるくると回る
先端部分の中には核やゴルジ体があり、それらも一緒にくるくる回る 表面の細胞膜は、先端部分とその他の部分の間に切れ目はない 流れない液体と流れる液体が接しているような感じで、連続的につながりながら、先端部分だけが回転する
細長い細胞の中には棒のような軸が通っており、この軸の先端に核やゴルジ体がくっついている
この軸が回転する結果、それに伴って核やゴルジ体が、そして先端近くの細胞膜も回転するらしい
細胞の中は連続しているので、回転している先端部分へ栄養を運ぶことに問題はないだろう
さらに2018年に山口大学の沖村らは、車輪を持つ細胞を、真核生物である魚類で報告している 魚の表皮にあるケラサイトという細胞で、表皮が傷つくと、傷ついた場所に移動して修復する働きがある https://gyazo.com/ef6f147aee1a34e3823fae3b6a41ae57
このケラサイトの移動速度はかなり速く、私達ヒトの表皮にあるケラチノサイトという細胞の10倍以上の速さで移動するらしい ケラノサイトの餃子の具の部分は細胞体とよばれ、ラグビーボールのような形をしている このラグビーボールが回転することによって、ケラノサイトは移動する
このように生物は、車輪などの回転構造を進化させることがある
しかし、これらの回転構造はすべて細胞レベルの小さな者
なので、物質の輸送を拡散というメカニズムで行うことができる 拡散とは、原子や分子の熱運動が原因で物質が動くこと 小さな生物の体内における物質の輸送はたいてい拡散で十分
大きな生物が大きな車輪を持つとなると、話が違ってくる
拡散によって酸素や栄養が届くのは皮膚の近くだけ
心臓や血管で体の中の方まで酸素や栄養を届ける必要がある 私達大きな動物には血管が必要だが、回転構造に血管をつなぐことはできない
そのため、大きな回転構造はできないのだろう
自動車や電車は分解できる
車体とタイヤは血管で繋がなくてよい
逆にいえば、生物は分解できないということ